日本市場における金相場は、海外の取引価格をもとに「ドル円為替相場」を反映させた金額となっています。
金の価格は、ロンドンやニューヨークなどの海外市場にて、米ドル単位で値決めが行われます。米ドルが軸となるため、金はアメリカ経済の動向に強い影響を受けており、1ドルの価値によって金価格が変動するのです。ほかにも、世界情勢による経済的な不安など多岐にわたる要素も絡むため、国際社会の動向にも注視する必要があります。

金の価格は需要と供給のバランスに影響を受けていますが、中でも需要は、投資と製造の二重構造です。
投資としての金は、現物購入や純金積立など、主に資産形成を目的としています。製造については、みなさんも見かけるであろう高級ブランドのジュエリー商品やパソコンなどの電子機器の一部です。身近なところに、金は使用されています。
供給量は単純に採掘量を指しますが、需要量がこのように複雑なため、金価格の変動を読み切るのを困難にしています。

需要が二重構造になっているように、市場も「現物市場」と「先物市場」の二種類があります。
現物市場は、言葉通り、金地金や金貨などの現物をその日の価格で売買することで、主にロンドン市場で取引されています。先物市場は主にニューヨークで行われており、金の価格や数量を先に約束し、その日がきたら売買を行う取引です。
買取業者は、いただいた現物を査定したうえで取引されるため、金価格は現物市場の相場を参考にしています。

金相場の最新情報は、金を取り扱う企業のホームページから、誰でも確認できます。
例えば、現物の金を取り扱う田中貴金属工業では、毎朝9時半に現物市場における金価格を公開しています。この価格は、純金1ｇあたりの金額であり、国内の取引における参考価格として大きな影響を与えています。先物取引における金価格は、東京商品取引所で確認可能です。
海外価格や為替相場によって金価格は変動するため、毎日確認しておきましょう。

金の取り扱いには、企業側の高い信頼性が必要です。純度の虚偽記載や偽造など、法やルールを順守することが重要であるため、日本企業でも取引できる会社は限られた数しかありません。そのため、金相場は「ロンドン貴金属市場協会（LBMA）」から認定を受けた企業の取引価格が参考にされています。
この認定を受けている企業は、田中貴金属工業、徳力本店、三菱マテリアルなどです。それぞれホームページに金相場を公表していますが、会社独自の視点も加味されているため、価格がわずかに異なる場合があります。

金相場は、生活の中にある製品の価格にも影響を与えます。
金製品を作る場合、メーカーは金を原材料として購入しています。金相場が変われば原材料の価格が上下するため、ジュエリーや時計などにわずかでも金が含まれていれば、商品価格が変わる可能性があるのです。
この価格変動は、電子機器や医療分野にも与えています。スマートフォンの部品の一部は金のパーツが使用されており、医療の機械や製品にも金が使われているからです。
もちろん、純金積立など投資に関わる金融商品も、金相場に直結しています。

世界経済の状況、各国の金融政策、地政学的リスクなどの要素が絡み合うかたちで、金相場は変動します。
例えば、ウクライナ戦争のように地政学的リスクが高ければ、貿易などが制限され、経済の景気も後退していきます。先行き不透明な状況であれば、金の需要が高まり、金相場は上昇するでしょう。
また、海外市場における金は米ドルで取引されています。米ドルはアメリカ経済に結びついているため、金利動向によって、金価格が変動します。利上げ政策であれば下落し、利下げを行えば上昇するといった具合です。
他にも金の採掘量に限界があるなど、さまざまな要因が金価格に圧力を加えています。国際社会の動向次第で変動するため、世界経済にも注意を傾ける必要があるでしょう。